「事業継続に必要な人手を確保する」ための安否確認
kintoneとRPAを活用し、情報メンテナンスにかかる手間を最小限に
kintoneとRPAを活用し、情報メンテナンスにかかる手間を最小限に
- 社名
- サイボウズ株式会社
- 業種
- ユーザー数
- エリア
- 掲載日
- 2024.12.3
課 題
災害発生時に安否確認を行う基準が明確でなく、管理者の判断による対応となり、確認漏れや対応遅延のリスクがあった
対 策
安否確認サービス2を導入し、震度や地域基準の設定を柔軟に行える仕組みを整備。安否確認を自動化し、即時対応が可能な体制を構築した
「kintone」と安否確認サービス2を連携させ、従業員情報の同期をほぼ自動化。更新作業を効率化し、情報の正確性を維持した
効 果
安否確認の自動化により、実施の判断や集計作業にかかる時間が不要となり、迅速な災害対応が可能になった
kintoneとRPAの活用で従業員情報が常に最新状態に保たれ、情報メンテナンスに要する負担を大幅に削減できた
同社ではBCPは策定していたものの、安否確認に関する対応については具体的な手順が定められていませんでした。それにより、災害発生時には管理者の判断で対応を進める必要があり、確認漏れや対応遅延の懸念があったといいます。
今回は安否確認サービス2を導入するまでの経緯や、システム運営の方針の定め方について、人事本部環境デザイン部総務チームの伊藤さんと牧原さんに伺いました。
kintoneとの相性が決め手となり、安否確認サービス2を導入
安否確認サービス2を導入する以前には、どのような課題を抱えていましたか?
伊藤さん:システムの導入以前から、BCPに基づいて安否確認を行うというルールはありました。ただ、震度何以上でどのように安否確認を実施するといった基準は定められていなかったんです。
そのため、安否確認をどのようにするかは管理者がその時々で判断する必要がありました。感覚的な対応となってしまったため、安否確認を実施するまでに時間がかかってしまったり、確認が漏れてしまったりといったリスクが懸念されていましたね。
どのようなきっかけがあり、安否確認サービス2の導入を実施することになったのでしょうか?
伊藤さん:当時のBCP自体、策定された時点の事業構造に基づいたもので、言ってしまえば少し古くなっていたんです。企業成長に伴って事業構造も変化していたため、BCP全体を見直す必要がありました。
その一貫で、安否確認体制も再設計することとなり、専用システムの導入を決定。安否確認サービス2を含む、いくつかのシステムで比較検討を実施することとなりました。
数あるシステムのなかから、安否確認サービス2導入を決めた理由を教えてください。
伊藤さん:必要な機能がすべて揃っていることが決め手でした。安否確認の『自動一斉送信』ができること、自動送信の基準である該当地域や震度の設定が柔軟にできること、そして送信する本文や『設問フォーム』の項目と文面を自由にカスタマイズできる点が魅力でした。
もう1つは、『kintone』との相性です。弊社では、社内の基幹システムとして自社製品のkintoneを活用しています。そのため、kintone連携ができるかは重要なポイントでした。その点、安否確認サービス2はほかサービスとの連携が容易で、kintoneアプリに登録されている従業員情報をあまり手間をかけずに連携できます。情報メンテナンスにかかる手間やコストが抑えられることも決め手の一つになりました。
目的を明確化し、事業継続に特化した運用方針へ
安否確認サービス2の導入後、運用方針はどのように策定していきましたか?
伊藤さん:4ヶ月ほどかけて運用方針を検討していきました。
注意深く検討を進めたのは、安否確認を実施する目的。せっかくシステムを導入しても、目的なく運用しては持ち腐れになってしまいます。
そのため、「なぜ安否確認を行うのか?」という点から整理し、目的を下記の2つに絞り込みました。
・事業継続に必要な人手を確保すること
・従業員全員の安否を把握すること
弊社には正社員だけでなく派遣社員や業務委託など、さまざまな雇用形態の従業員がいます。この2つの目的に沿って「誰に対して安否確認を実施するのか」という運用方針について、定めていくことになりました。ただ、検討を進めるなかで、目的の見直しがあり、最終的には「事業継続に必要な人手を確保すること」の目的に絞って運用方針を決めていきましたね。
なぜ、事業継続に目的を絞ったのでしょうか?
伊藤さん:検討開始時点では、どちらの目的も果たせる運用方針を目指していたんです。しかし従業員全員の安否を確認するとなると、安否確認の対象と軸が無数になり、結果的に状況把握が難しい運用になってしまうと判断しました。
そのため、BCP本来の目的である「事業継続に必要な人手を確保すること」にフォーカスし安否確認を実施することに。運用方針としては、事業継続に重要である「社内システムを運用できる=システムのアカウントを持っている」従業員を、安否確認の対象者と定めました。
管理側・従業員側の負担を減らすため、そして事業継続に特化させるため、質問事項も「安全に勤務できる状態ですか?」という質問に対して「はい」か「いいえ」で回答するというシンプルな形に。その一方で、被災状況など別途報告がある従業員の声も拾えるように、自由記載ができる設問も設定しました。
企業の利益を守るためにも、従業員の生活を守るためにも「災害発生時に業務対応できる従業員を把握する」という安否確認体制に振り切り、運用しています。
安否確認の目的に準じた設定へ
導入後、安否確認サービス2をどのように活用していますか?
牧原さん:災害発生時にはもちろん、年に2回の安否確認訓練の際にも活用していますね。安否確認サービス2利用企業が対象の『全国一斉訓練』にも参加していますし、弊社独自の訓練も行っています。
また、新型コロナウイルス感染症が流行していた時期は、メッセージ機能でオフィス出社の可否を従業員に伝えるためにも活用していました。
安否確認を行う基準はどのように設定していますか?
牧原さん:システム導入当初は、震度5強以上の地震が起こった場合に、発生地域の安否確認対象者に対して通知が送信される設定にしていました。しかし、現在は国内で震度6弱以上の地震が発生した場合、全員へ通知される設定に変更しています。
設定を変更した背景には、令和6年能登半島地震があります。元日に発生したため、登録されている居住地=現住所ではなく、帰省先の実家などに滞在している従業員が多数いました。しかし、当時は居住地基準で安否確認が実施される設定だったため、被災地域にいたにも関わらず、安否確認の対象外となってしまった従業員がいました。
このことから、災害はいつどこで起きるものかわからないと再認識しました。さらにリモートワークが浸透していることも踏まえると、地域を限定した安否確認では全対象者の安否確認を完遂できない可能性があると実感し、設定を変更しました。
新しい基準は、どのような考えをもとに設定されたのでしょうか?
牧原さん:考えのベースとしては、いつどこで災害が起きても、全対象者の安否確認を完遂できるようにすること。しかし、ただ対象地域を日本全域に変更すると、配信頻度が増えてしまうため、悪い意味で安否確認に慣れてしまい、回答率が低下する懸念がありました。
そこで「本当に安否確認が必要な地震の規模」を議論し、基準を見直していきました。震度5も大きな地震ではありますが、働くことができない事態を引き起こす可能性は高くありません。社内で検討を進めた結果、震度6強の地震があれば緊急性が高いと見解が一致したため、基準を設定しましたね。
従業員に「安否っぴ」と呼ばれるほどシステムが定着。事業継続への効果に期待
安否確認サービス2を導入したことで、どのような成果が得られましたか?
伊藤さん:地震発生時に、安否確認を実施するかどうかと検討する時間が一切不要に。そもそも連絡から集計まで自動で実施されるので、安否確認にはほとんど手間がかかっていません。
またシステムの導入時と基準の見直しの際に安否確認の目的をしっかり整理したことで、災害時にマネージャーは何をするべきか、従業員は何をするべきかと、それぞれのやるべきことが明確になったのもBCPおよび事業運営に寄与する成果だと感じています。
もう1つ副産物としては、従業員のなかで安否確認が以前より定着したこと。弊社では、kintone内で社内の分報を運用しているのですが、安否確認の通知が届くと、それに気がついた従業員が分報で「安否確認届いてるよ」とほかの対象者に周知してくれたりもして。親しみを込めて「安否っぴ」と呼んでる従業員もいるほどです(笑)。
従業員にも定着しているんですね。牧原様は運用の実務を担当しているとのことですが、システムとしての使用感はいかがでしょうか?
牧原さん:安否確認システムの運用を担当するのははじめてで、不安もありました。しかし安否確認サービス2は、メッセージ作成や運用設定などがとても簡単で、すごく使い勝手の良いシステム。何も問題なく、運用できています。
また、導入する決め手の一つになったkintoneとの相性の良さ=連携のしやすさについても、その効果を実感しています。弊社ではkintoneアプリと安否確認サービス2をRPAを活用して連携しており、入退社や異動など従業員情報に変更があった際は、変更内容によって即日~5営業日以内に情報を反映しています。そのため、最低限の手間で、最新情報に更新されているという状態が実現できています。
追記:2024年10月25日にkintoneアプリとの連携が可能となりました。
詳細については以下をご覧ください。
https://www.toyokumo.co.jp/2024/10/25/anpi-update-kintone-app-link
最後になりますが、安否確認やBCPについて今後の展望を教えてください。
牧原さん:安否確認サービス2を導入したことで、災害への対策を整えることができました。今後は「事業継続」を軸に据えて、各種災害へより迅速かつ適切に対応できる体制の構築を目指していきます。
素敵なお話をありがとうございました。今後の防災・BCP対策においても引き続き安否確認サービス2をお役立てください!
※掲載内容は取材当時のものです。